アレルギーとは
私たちの身体には、ウイルスや細菌などの外敵から身を守るための機能“免疫”が備わっています。免疫は、異物に対する抗体をつくり、その異物を攻撃して排除します。
この免疫が、特定の物質に対して過剰に反応してしまい、さまざまな症状を引き起こしてしまうことを「アレルギー」といいます。
“特定の物質”は実に多岐にわたり、よく知られるところではスギ花粉やダニ、ペットの毛などが挙げられます。また、食品がアレルギーの原因になることもあります。これらアレルギーの原因となる物質がアレルゲン(抗原)です。
そして、アレルゲンが体内に侵入して複数の臓器または全身にアレルギー症状が現れ、生命の脅かすような状態を特に「アナフィラキシー」と呼びます。
増加し続けるアレルギー疾患
厚生労働省の調査によると、現在国民の約半数が何等かのアレルギー疾患を持っていることが分かっています。約20年前の調査では“3人に1人”という割合でしたので、アレルギーを持つ方が急激に増えているということになります。
これには、戦後に大規模に植林されたスギによる花粉の増加、住宅の高気密化による換気不足、建物の材料に含まれる化学物質によるハウスダスト、あるいは大気汚染などさまざまな要因がかかわっていると言われていますが、残念ながら正確な原因はまだ分かっていません。
アレルギーによって起こる病気
アレルギー性結膜炎
目のかゆみ、充血、ゴロゴロという異物感、液状の目ヤニ、鼻水、鼻づまりなどの症状を伴います。
季節性アレルギー性結膜炎
花粉によって、特定の季節(その花粉が飛散する季節)に症状が現れるアレルギー性結膜炎です。
スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなど、さまざまな植物の花粉がアレルゲンとなります。
通年性アレルギー性結膜炎
埃、塵、真菌(カビ)、ペットの毛、ダニなどのハウスダストによって、一年中症状が現れるアレルギー性結膜炎です。
春季カタル
目のかゆみや痛み、白い目ヤニ、黒目と白目の境目の腫れ、粘膜のただれ、視力低下などの症状を伴うアレルギー性結膜炎の1種です。
病名に“春季”とありますが、症状は通年で現れます。小学生くらいのお子様によく見られます。
コンタクトレンズアレルギー
目のかゆみや痛み、粘性の高い目ヤニなどの症状を伴います。
コンタクトレンズそのものではなく、そこに付着したたんぱく質、汚れ、消毒液などがアレルゲンになっています。
接触皮膚炎
瞼にかぶれが生じます。その他、全身の皮膚や粘膜に症状をきたすこともあります。
金属、化粧品、点眼薬、消毒液、整髪料、日焼け止め、ゴムなど、さまざまな物質がアレルゲンになります。
点眼薬アレルギー
瞼の表面や結膜、角膜などの炎症を伴います。
点眼薬に含まれる防腐剤などがアレルゲンになります。
その他
細菌へのアレルギー
結膜・角膜の白い水ぶくれ、充血、ゴロゴロとした異物感などの症状を伴います。
結核菌、ブドウ球菌、クラミジアなどがアレルゲンとなります。
スティーブンス・ジョンソン症候群
発熱、湿疹、ただれなどの全身症状を伴います。
内服薬の副作用を疑います。
アトピー性皮膚炎の眼合併症
アトピー性皮膚炎の合併症として、角結膜炎、白内障などを発症することがあります。
アトピー性皮膚炎の方で眼の症状が現れている方は、お早めにご相談ください。
原因
花粉、ハウスダスト、金属、化粧品、薬剤、細菌、食品など、さまざまなものが原因(アレルゲン)となります。
血液検査やパッチテストで原因を特定し、原因に応じた治療を行っていきます。
治療
アレルゲンの回避
根本的なことではありますが、アレルギーを引き起こすアレルゲンを回避することは非常に重要になります。
アレルゲンを取り込まないため、接触しないためにできることを、患者さんお一人お一人のアレルギーのタイプ、ライフスタイルに応じて指導します。
薬物療法
アレルギーの症状を和らげる点眼薬、アレルギー反応を起こりにくくする抗アレルギー点眼薬、炎症を抑えるステロイド点眼薬、春季カタルなどに有効な免疫抑制点眼薬などを使用します。
また、感染症を予防する抗生物質を併用することもあります。
セルフケア
治療の中の「アレルゲンの回避」という項目にも記載しましたが、アレルゲンを取り込まない・接触しないということは、症状の軽減や予防に大いに役立ちます。
花粉の回避
- その花粉の飛散の時期はできるだけ外出しない(花粉の飛散予報を確認する)
- 外出するときはマスクや花粉対策用のゴーグルを着用する
- 帰宅時には、玄関ドアの外で上着、衣類、髪の毛に付着した花粉を払い落とす
- 帰宅後は、手洗い、うがい、洗顔を行う
- 帰宅後は、できるだけすぐにお風呂に入る。
- 屋外で身に着けたものは、できるだけその都度洗濯する
- 頻繁に洗えないコートなどは、玄関近くで保管する
- 洗濯物、布団をできるだけ屋外で干さない
- 屋外で干した場合は、掃除機をかけて花粉を落とす
- 部屋の掃除をこまめにする
- 空気清浄機を使用する
ハウスダストの回避
- 部屋の掃除をこまめにする
- カーペットの使用は避ける(ハウスダストが付着・残存しやすいため)
- 換気をよくする
- クッション、ソファなど布製品の家具を避ける
- カーテン、カバー、布団などをできるだけこまめに洗う
- ペットを飼わない
- ペットを飼う場合も、寝室には入れない
アトピー性皮膚炎と目の病気
アトピー性皮膚炎の合併症として、以下のような眼の病気を発症することがあります。
アトピー性皮膚炎の方で眼の症状が現れている方は、お早めにご相談ください。
アトピー性角結膜炎
アトピー性皮膚炎による瞼の炎症が進行し、角膜・結膜を傷つけ炎症をきたした状態です。
ダニアレルギーであるケースが多いため、ハウスダスト対策も重要になります。
白内障
アトピー性皮膚炎に伴う強いかゆみのせいで、目のまわりを繰り返し掻く・叩くなどして水晶体にダメージが蓄積し、白内障を発症してしまうことがあると言われています。
原因を加齢とする一般的な白内障と比べて、進行が速い傾向にあります。
網膜剥離
白内障と同様に、強いかゆみのせいで目のまわりを繰り返し掻く・叩くなどすることが原因だといわれています。その刺激が網膜に伝わり、網膜剥離を起こします。
円錐角膜
円錐角膜は、角膜の中心が円錐状に突出し、不正乱視を引き起こす病気です。
アトピー性皮膚炎の方は、そうでない方と比べて円錐角膜の発症率が10倍以上にのぼります。